鏡音リン・レン カバーアルバム「Prism」
2009年6月24日 VOCALOID-CD コメント (1)
予定よりは少し遅くなってしまったけど、
今日から先日買ってきた4枚のCDレビューをしたいと思います。
1番手はタイトル通りPrismから。先日の記事にも書いた通り
「リンレンの中の人のカバーアルバム」です。
遠征の目的の1枚だっただけに注目です。
なのでけっこう気合を入れて書きます。
(参考までに、先週のオリコンで初登場26位でした)
全体的には期待以上の出来でした。
とにかく曲ごと、あるいは同じ曲でもパートごとの歌い分けがお見事。
これは普通の歌手には出来ないだろう芸当でしょう。
ボーカロイド絡みとは言えいわゆる「声優さん」のCDを買ったのは初めてだったのですが、
「歌い分け」という点に置いては、一般的な「歌手」を凌駕できるのだと感じました。
原曲(=ニコニコ等にあるリン・レンが歌ったもの)とは違うものも多いです。
これはあくまでカバーアルバムであり、再現アルバムではないです。
その点で賛否両論あるようですが個人的には全体としてはアリだったと思います。
オリジナルはオリジナル、コレはコレでどちらにも良さはある。
というのは大事な前提です。以下はその前提は持った上での感想です。
さて、久しぶりに全曲ちょっとずつでも感想を書こうと思います。
アルバムの性質上、ボーカロイドが歌った元の曲との比較が多くなりますがご了承を。
多少、辛口な評価も含みますが、全て自分が感じた主観です。鵜呑みにはしないように。
○全曲簡易感想○
1.ココロ
トップを飾るのは1曲目にふさわしい、知名度・完成度共にリンレンを代表する1曲「ココロ」
原曲よりもややキーを落としています。まぁこの曲の高音域を考えれば仕方ないかと。
最初に聞いた時の印象は、正直に言ってしまうとズコーって感じでした。
「これは期待外れだったかな。」とすら思ってしまいました。
何回か聴いていくうちに、多少は良く思えてきました。
別に歌自体が下手なわけではないし、むしろ上手いとも思う。
キーが低いのは違和感がないわけではないけども、まぁ妥当なところかなとも思う。
でも、やっぱり何かが違う。この印象は拭いきれませんでした。
上手く説明できないんだけど、なんだかしっくり来ない。
やっぱりこの曲は「鏡音リン」が歌ってこそだなと感じずにはいられませんでした。
言わば本人が歌っていて、しかもそれが下手でもないのに違和感を感じてしまうのだから、
この曲を違和感無く歌い上げられる人間は少なくとも自分にとってはいないのでしょう。
2.Daybreak
このアルバムの収録曲の中で1番驚いた曲がこの「Daybreak」
と言うのもこの曲だけは、元々リンレンの曲ではないんだから。
最初は、「初音ミク」に歌わせて発表された曲でした。
それをリンレンが発売後、試しにリンとレンで歌わせてみた作品でした。
これもココロ同様、原曲よりもキーが下がってます。
ミクの原曲とはまた違った感じに仕上がっています。でもこれが予想外に合う。
元々人が歌っても違和感ないような曲だったと思うけど、
かなりカッコよく歌ってくれました。こういう熱い曲は大好きです♪
3.ライバル
意外と知られてないシグナルPによるリン単体のオリジナル曲「ライバル」
これは原曲をほとんど覚えていませんでした。
たぶん1回聴いただけでスルーしてしまっていたのでしょうね。
なのでこの曲はPrism版の方が印象は強いのですが・・・
何回か聴いてから、ニコニコ動画のリン版も聴いて比較してみたけど、
これはうり二つと言ってもいいのではないだろうか。
なんとなく聴いているだけでは同一だと思ってしまい兼ねないほど似ていると思う。
おそらく収録曲13曲(厳密には「Prism」を除く12曲か)の中でも
もっとも原曲に近い1曲だと思います。
4.頑張ろうよ
ココロに続きトラボルタ氏の楽曲。最初のレンオリジナルである「頑張ろうよ」
1つ前のライバルからは打って変わって原曲とはかなり異なった雰囲気が出ています。
原曲よりもかなり自然に、流れるように歌っていると思います。
特にサビの高音域の部分が女声ならではの綺麗さがありますね。
レンの原曲もよく聴いていますが、この曲についてはこっちのが好きかも。
5.おてんば姫の歌♪
引き続きトラボルタ氏の曲3個目。
某国民的超有名RPGの4作目の第2章の某お姫様の曲「おてんば姫の歌」(笑)
もちろん他の曲にも言えることだけど、どの曲よりも作詞のセンスが光ってる曲だと思う。
今までの熱い・カッコイイ系の歌い方から一気にカワイイ系に。
(ココロの歌い方はどちらかと言うとカワイイ系な気もしますが)
原曲のリンよりも可愛さを強調した歌い方です。
聴いてるこっちが恥ずかしくなってくるくらいw
6.リンリンシグナル
リンレンの存在を知らしめるのに大きく貢献したシグナルPのデビュー作「リンリンシグナル」
1つの曲の中にリンの部分とレンの部分の両方があるのは、
コレと「South North Story」と「ジェミニ」だけですが、
その中でも特にリンのパートとレンのパートの歌い分けが見事です。
掛け合いのようになる部分やサビ、間奏の喋りなど、
歌い分けるのが非常に難しいと思っていたのでね。
この曲の完成度がアルバムの出来を左右すると言っても過言ではないと思っていました。
それを見事なまでにやり遂げているんだから本当にスゴイとしか言いようがない。
「リン・レンの中の人」ではなくて「下田麻美」としての本気を見た気がします。
ちなみに、某インタビュー記事に「この曲だけはキャラソンのように歌った」
とありましたが、確かにそれっぽい印象はありましたね。
ただ、1つ前のおてんば姫も十分キャラソンな気がしたのは自分だけでしょうか?
7.イタズラムスメ
ピアプロとのオフィシャルコラボの中から選ばれた「イタズラムスメ」
いわば「ピアプロ代表」と言える1曲です。
この曲だけは今でも元となったリン版を聴いていません。
もともと本人に歌ってもらうのを意識して作られたんだと思うから、
この曲に関してはわざわざ比較する必要もないかなと思ったのでね。
昭和な雰囲気の至る所に遊び心がある不思議な曲、という印象でした。
数ある投稿された楽曲の中から選ばれた1曲だけに、
歌い手である彼女の好み、こだわりがすごく感じられました。
インタビューなどの選定・製作にまつわる話を読むとだいぶ印象が変わると思うのでぜひ。
8.soundless voice
収録曲中数少ないオリジナルではレンがボーカルな「soundless voice」
原曲はレンのみなのはコレと頑張ろうよのみ。
これもライバル同様オリジナルは1回聴いただけでスルーしていました。
これはハッキリ言って本家超えただろ。
原曲よりもかなり聴き取りやすく、鮮明なイメージが描かれるように思えます。
原曲のボソボソした感じが悲壮感を演出していると解釈したんだけど、どうなんだろう。
そこまで元のレンのほうは聴き込んでないのでなんとも言えないですね。
個人的にはカバーのこっちの方が断然好きです。やっぱり聴き取りやすさはとても大事です。
9.ぜんまい仕掛けの子守唄
ニコニコにある曲の中で唯一1回も聴いたことがなかった「ぜんまい仕掛けの子守唄」
正直mothy氏の楽曲はほとんど聴いていませんでした。
と言うのも本音を書くと「悪ノ召使」が無駄に持て囃されて好きじゃなかったので。
が、このCDのおかげでちょっと興味を持てたので少し
ニコニコの「ぜんまい仕掛けの子守唄」も聴いてみました。
結果、リン版と下田麻美版でかなり違う印象を受けました。
リン版よりもだいぶカワイイ感じに仕上がっていると思います。
ちょっと抽象的な言い方になっちゃうけど、
鏡音リン版は「ぜんまい仕掛け」であること、
下田麻美版は「子守唄」であることにそれぞれ重きを置いてるなと感じました。
10.South North Story
大物作者同士のコラボ作品として話題になった「South North Story」
これも本家を超えた1作と言えると思います。
リンリンシグナルの歌い分けは見事だと自分も思うしそれを絶賛する声も多いようですが、
個人的にはそれよりもむしろこの曲の歌い分けの上手さを称えたい。
パートごとにmothy氏のリンとゆにめも氏のリンのパートがしっかり認識出来るのだから。
別々のパートならまだしも、2つの声が重なるサビの部分でも聞き分けられるしね。
これは声を重ねる技術が高かったのかも知れないですが、それにしてもすごい。
無意識に聴いていたら歌っているのが別人だと勘違いしてもおかしくないのでは?
終盤の英語の部分はオリジナルではレンですが、
このカバーではそこまで男声っぽさを強調はしてませんでした。
なんとなく彼女の素の声に近い感じだったのかなぁ、という気がします。
オリジナルの方は個人的に調声が残念な出来だったので1回聴いて終わりだったのですが、
下田麻美バージョンのコレは個人的に大当たり。
このアルバムを買って正解だと思わせる見事な1曲でした。一押しです。
11.炉心融解
今ではすっかり鏡音リンの代名詞、「炉心融解」
原曲よりもキーはかなり低め。とは言えあの高音部を考えれば無理もないか。
個人的にはココロ程ではないけどやや違うなーという印象が。
この曲に関しては正直どうしたかったのかが見えない。
結果としてすごく中途半端になっちゃってる気がしてならない。
鏡音リンのそれに近づけたければ無理してでももう少しキーを原曲に近づけるべきかと。
いや、相当頑張ってるのはとてもよく分かるんだけどね。
原曲とは異なる彼女の路線でいくならもっと中性的な声にした方が良かったのでは?
「頑張ろうよ」や「soundless voice」のような歌い方が合っていたような気がする。
とまぁ、否定的なことを書いたけど、ココロと同じで別に下手なわけではない。
むしろ歌だけなら上手いと思う。ただ、上手いだけ。それだけ。という印象なんです。
ココロ程ではないけれど、コレもボーカロイドが歌ってこその曲だとは思いますね。
12.ジェミニ
鏡音リンレン初期の名曲の1つ「ジェミニ」
オリジナルはラップの部分がどうも好きになれなくて敬遠してたんだけど、
こちらはその部分も含めてなかなかに良い出来。
全体的に優しさに包まれた雰囲気を演出した歌い方だと思います。
曲のテンポ自体は変わってないはずなのに、
オリジナルよりもゆったりしたように感じられるから不思議。
13.Prism
このアルバムのための書き下ろし曲「Prism」
名曲揃いのこのアルバムだけど、1番はコレだと思う。
ボーカロイド曲目当てで買ったはずなのになぜそう感じてしまったのか。
正直自分でも信じられないくらい。ビックリです。
恐らくは、他の曲はどれも元々はボーカロイドが基準だったのに対し、
この曲だけは最初から「鏡音リン」ではなく「下田麻美」が歌う曲として作られたからかな。
この曲があって初めてこのアルバムは完成できたんだろうなぁと思う。
そして、この曲があるからこそ他の曲も活きたしこの曲も存在感があると言えるはず。
そう思うのも、恐らくこの"Prism"という曲は単体だったら別に普通だろうと思うから。
シングルCDでこの曲を出していたとしても、恐らくスルーしていただろう。
でも、この曲が収録されている他の曲はみんなボーカロイドの曲。
今でこそ多少は知名度も上がってきたが、まだまだそれらが普通とは呼べないだろう。
言ってしまえばまだ「異端な」、あるいは「非一般的な」曲になっちゃうだろう。
そんな異端な曲ばかり集まった中に、1つだけある「普通な」曲。
それがこのPrismなんだと思う。
で、「普通」の中に1つ「普通じゃない」ものがあればそれを異端と扱うように、逆もまた然り。
「異端」なものの中に1つだけ「普通」なものがあれば、それもまた「異端」なのだ。
だからこそ、このPrismという曲はあれだけの存在感を放てたのではないかなと。
とは言えそれで存在感を示せるのは確かな楽曲のクオリティがあってこそ。
下田麻美さんの本気と、シグナルPの本気が生み出した結果生まれたのは言うまでもない。
だから、やっぱりこの曲があって初めてこのアルバムがあるんだと思う。
小難しいことを語っちゃったけど、つまりは「GJ」ってことですw
●収録曲に関して●
収録曲の選定についてはかなり良かったと言えるでしょう。
ネタ曲を入れず、全てガチ曲ばかりで揃えてきたのも評価できますね。
そのおかげで1つ1つの曲はすごく個性的だけども、
全体としてはまとまった絶妙なバランスのアルバムに仕上がったと思う。
欲を言えばもう少し、違う作者さんの曲も聴きたかったとは思いますが。
また、ニコニコの再生数だけ見て安易に「悪ノ召使」を入れなかったのも良かった。
アレはサビ以外は正直聴きやすいと言えるレベルじゃなかったと思うので、
歌ってもらったら更に化ける可能性はあったと思うけどね。
でも召使を単品で入れるなんて愚行かと。入れるなら「悪ノ娘」も入れないと。
できれば「リグレットメッセージ」まで欲しいところ。そうなると枠的に厳しかったのは明白。
結果論かも知れないけど「ぜんまい仕掛けの子守唄」という選曲は当たりだったと思う。
ただ、曲の感想にも書いたけど「ココロ」と「炉心融解」は人間が歌うには向かないと痛感。
分かっていたことだし覚悟はしてたけど、やっぱり多少違和感があったと正直思う。
とは言えどちらも鏡音リンを代表する楽曲なだけに、外せない事情も分かるけどね。
●まとめ●
気合を入れてたら本当に物凄い字数になってしまった。
それだけ色々なことを感じさせてくれたアルバムだったのは間違いないでしょう。
ネット上に掲載されているインタビュー記事などまで読み漁っちゃったくらいだし。
かなり期待していただけに多少の不満はあったものの、
全体的には期待していた以上に良かった1枚でした。
●オマケ 歌ってみて欲しかった曲たち●
1:よつばのクローバー(トラボルタ氏)
トラボルタ氏の作品なら、ココロよりこっちの方が聴きたかった。
ココロに関しては上記の懸念は最初からあったのでね。
あとは「少年銀河」なんかもあったら嬉しかったかも。
2:Transmit(シグナルP)
はさすがに無理か(汗)
最後の部分の超高音なんかはどう考えても人間には・・・ww
3:RING×RING×RING(Oster project)
リンリンシグナルとはまた違った方向でのキャラソン的位置づけとしてはアリだったかと。
4:さくら(ぶりるP)
それほど有名な曲ではないですがお気に入り。
初めてリンで「これはいい!」と思えた曲だったので。
5:右肩の蝶(のりP)
発表が最近だったので時期的に無理なのは分かるけども。
個人的にはリン版の方を希望。
6:Fire◎Flower(absorb)
力強い感じのレンオリジナル曲があまり無いので。
7:ロードローラー音頭(乱数P)
いや、ネタ曲はなしなのは分かるんだが・・・
イタズラムスメを聴いて、インタビュー記事を読んでたらふとコレが思い浮かんできて。
ぜひ思いっきりこぶしをきかせて歌ってほしい(笑)
うん、キリがなくなってきたしいい加減この辺でやめよう。
と言うか(最後の2つ以外は)自分のお気に入りを並べただけのような・・・
今日から先日買ってきた4枚のCDレビューをしたいと思います。
1番手はタイトル通りPrismから。先日の記事にも書いた通り
「リンレンの中の人のカバーアルバム」です。
遠征の目的の1枚だっただけに注目です。
なのでけっこう気合を入れて書きます。
(参考までに、先週のオリコンで初登場26位でした)
●収録曲●
1. ココロ (作詞・作曲・編曲:トラボルタ)
2. Daybreak (作詞・作曲・編曲:SAM)
3. ライバル (作詞:Miharu 作曲・編曲:Dios/シグナルP)
4. 頑張ろうよ (作詞・作曲・編曲:トラボルタ)
5. おてんば姫の歌♪ (作詞・作曲・編曲:トラボルタ)
6. リンリンシグナル (作詞・作曲・編曲:Dios/シグナルP)
7. イタズラムスメ (作詞・作曲・編曲:さむそんP)
8. soundless voic (作詞・作曲・編曲:ひとしずくP)
9. ぜんまい仕掛けの子守唄 (作詞・作曲・編曲:mothy(悪ノP))
10. South North Story (作詞・作曲:mothy(悪ノP) 英詞・編曲:ゆにめもP)
11. 炉心融解 (作詞:KUMA 作曲・編曲:iroha(sasaki))
12. ジェミニ (作詞・作曲・編曲:DixieFlatline)
13. Prism (作詞:下田麻美 作曲・編曲:Dios/シグナルP )
試聴も出来る公式サイトはコチラ
【http://asapon.jp/】
初音ミクwiki[Prism]はコチラ
【http://www5.atwiki.jp/hmiku/pages/5311.html】
インタビュー記事は(Game Spot)はこちら(他にも色んなページにありますが)
前編:【http://japan.gamespot.com/news/story/0,3800076565,20394082,00.htm】
後編:【http://japan.gamespot.com/news/story/0,3800076565,20394083,00.htm】
全体的には期待以上の出来でした。
とにかく曲ごと、あるいは同じ曲でもパートごとの歌い分けがお見事。
これは普通の歌手には出来ないだろう芸当でしょう。
ボーカロイド絡みとは言えいわゆる「声優さん」のCDを買ったのは初めてだったのですが、
「歌い分け」という点に置いては、一般的な「歌手」を凌駕できるのだと感じました。
原曲(=ニコニコ等にあるリン・レンが歌ったもの)とは違うものも多いです。
これはあくまでカバーアルバムであり、再現アルバムではないです。
その点で賛否両論あるようですが個人的には全体としてはアリだったと思います。
オリジナルはオリジナル、コレはコレでどちらにも良さはある。
というのは大事な前提です。以下はその前提は持った上での感想です。
さて、久しぶりに全曲ちょっとずつでも感想を書こうと思います。
アルバムの性質上、ボーカロイドが歌った元の曲との比較が多くなりますがご了承を。
多少、辛口な評価も含みますが、全て自分が感じた主観です。鵜呑みにはしないように。
○全曲簡易感想○
1.ココロ
トップを飾るのは1曲目にふさわしい、知名度・完成度共にリンレンを代表する1曲「ココロ」
原曲よりもややキーを落としています。まぁこの曲の高音域を考えれば仕方ないかと。
最初に聞いた時の印象は、正直に言ってしまうとズコーって感じでした。
「これは期待外れだったかな。」とすら思ってしまいました。
何回か聴いていくうちに、多少は良く思えてきました。
別に歌自体が下手なわけではないし、むしろ上手いとも思う。
キーが低いのは違和感がないわけではないけども、まぁ妥当なところかなとも思う。
でも、やっぱり何かが違う。この印象は拭いきれませんでした。
上手く説明できないんだけど、なんだかしっくり来ない。
やっぱりこの曲は「鏡音リン」が歌ってこそだなと感じずにはいられませんでした。
言わば本人が歌っていて、しかもそれが下手でもないのに違和感を感じてしまうのだから、
この曲を違和感無く歌い上げられる人間は少なくとも自分にとってはいないのでしょう。
2.Daybreak
このアルバムの収録曲の中で1番驚いた曲がこの「Daybreak」
と言うのもこの曲だけは、元々リンレンの曲ではないんだから。
最初は、「初音ミク」に歌わせて発表された曲でした。
それをリンレンが発売後、試しにリンとレンで歌わせてみた作品でした。
これもココロ同様、原曲よりもキーが下がってます。
ミクの原曲とはまた違った感じに仕上がっています。でもこれが予想外に合う。
元々人が歌っても違和感ないような曲だったと思うけど、
かなりカッコよく歌ってくれました。こういう熱い曲は大好きです♪
3.ライバル
意外と知られてないシグナルPによるリン単体のオリジナル曲「ライバル」
これは原曲をほとんど覚えていませんでした。
たぶん1回聴いただけでスルーしてしまっていたのでしょうね。
なのでこの曲はPrism版の方が印象は強いのですが・・・
何回か聴いてから、ニコニコ動画のリン版も聴いて比較してみたけど、
これはうり二つと言ってもいいのではないだろうか。
なんとなく聴いているだけでは同一だと思ってしまい兼ねないほど似ていると思う。
おそらく収録曲13曲(厳密には「Prism」を除く12曲か)の中でも
もっとも原曲に近い1曲だと思います。
4.頑張ろうよ
ココロに続きトラボルタ氏の楽曲。最初のレンオリジナルである「頑張ろうよ」
1つ前のライバルからは打って変わって原曲とはかなり異なった雰囲気が出ています。
原曲よりもかなり自然に、流れるように歌っていると思います。
特にサビの高音域の部分が女声ならではの綺麗さがありますね。
レンの原曲もよく聴いていますが、この曲についてはこっちのが好きかも。
5.おてんば姫の歌♪
引き続きトラボルタ氏の曲3個目。
某国民的超有名RPGの4作目の第2章の某お姫様の曲「おてんば姫の歌」(笑)
もちろん他の曲にも言えることだけど、どの曲よりも作詞のセンスが光ってる曲だと思う。
今までの熱い・カッコイイ系の歌い方から一気にカワイイ系に。
(ココロの歌い方はどちらかと言うとカワイイ系な気もしますが)
原曲のリンよりも可愛さを強調した歌い方です。
聴いてるこっちが恥ずかしくなってくるくらいw
6.リンリンシグナル
リンレンの存在を知らしめるのに大きく貢献したシグナルPのデビュー作「リンリンシグナル」
1つの曲の中にリンの部分とレンの部分の両方があるのは、
コレと「South North Story」と「ジェミニ」だけですが、
その中でも特にリンのパートとレンのパートの歌い分けが見事です。
掛け合いのようになる部分やサビ、間奏の喋りなど、
歌い分けるのが非常に難しいと思っていたのでね。
この曲の完成度がアルバムの出来を左右すると言っても過言ではないと思っていました。
それを見事なまでにやり遂げているんだから本当にスゴイとしか言いようがない。
「リン・レンの中の人」ではなくて「下田麻美」としての本気を見た気がします。
ちなみに、某インタビュー記事に「この曲だけはキャラソンのように歌った」
とありましたが、確かにそれっぽい印象はありましたね。
ただ、1つ前のおてんば姫も十分キャラソンな気がしたのは自分だけでしょうか?
7.イタズラムスメ
ピアプロとのオフィシャルコラボの中から選ばれた「イタズラムスメ」
いわば「ピアプロ代表」と言える1曲です。
この曲だけは今でも元となったリン版を聴いていません。
もともと本人に歌ってもらうのを意識して作られたんだと思うから、
この曲に関してはわざわざ比較する必要もないかなと思ったのでね。
昭和な雰囲気の至る所に遊び心がある不思議な曲、という印象でした。
数ある投稿された楽曲の中から選ばれた1曲だけに、
歌い手である彼女の好み、こだわりがすごく感じられました。
インタビューなどの選定・製作にまつわる話を読むとだいぶ印象が変わると思うのでぜひ。
8.soundless voice
収録曲中数少ないオリジナルではレンがボーカルな「soundless voice」
原曲はレンのみなのはコレと頑張ろうよのみ。
これもライバル同様オリジナルは1回聴いただけでスルーしていました。
これはハッキリ言って本家超えただろ。
原曲よりもかなり聴き取りやすく、鮮明なイメージが描かれるように思えます。
原曲のボソボソした感じが悲壮感を演出していると解釈したんだけど、どうなんだろう。
そこまで元のレンのほうは聴き込んでないのでなんとも言えないですね。
個人的にはカバーのこっちの方が断然好きです。やっぱり聴き取りやすさはとても大事です。
9.ぜんまい仕掛けの子守唄
ニコニコにある曲の中で唯一1回も聴いたことがなかった「ぜんまい仕掛けの子守唄」
正直mothy氏の楽曲はほとんど聴いていませんでした。
と言うのも本音を書くと「悪ノ召使」が無駄に持て囃されて好きじゃなかったので。
が、このCDのおかげでちょっと興味を持てたので少し
ニコニコの「ぜんまい仕掛けの子守唄」も聴いてみました。
結果、リン版と下田麻美版でかなり違う印象を受けました。
リン版よりもだいぶカワイイ感じに仕上がっていると思います。
ちょっと抽象的な言い方になっちゃうけど、
鏡音リン版は「ぜんまい仕掛け」であること、
下田麻美版は「子守唄」であることにそれぞれ重きを置いてるなと感じました。
10.South North Story
大物作者同士のコラボ作品として話題になった「South North Story」
これも本家を超えた1作と言えると思います。
リンリンシグナルの歌い分けは見事だと自分も思うしそれを絶賛する声も多いようですが、
個人的にはそれよりもむしろこの曲の歌い分けの上手さを称えたい。
パートごとにmothy氏のリンとゆにめも氏のリンのパートがしっかり認識出来るのだから。
別々のパートならまだしも、2つの声が重なるサビの部分でも聞き分けられるしね。
これは声を重ねる技術が高かったのかも知れないですが、それにしてもすごい。
無意識に聴いていたら歌っているのが別人だと勘違いしてもおかしくないのでは?
終盤の英語の部分はオリジナルではレンですが、
このカバーではそこまで男声っぽさを強調はしてませんでした。
なんとなく彼女の素の声に近い感じだったのかなぁ、という気がします。
オリジナルの方は個人的に調声が残念な出来だったので1回聴いて終わりだったのですが、
下田麻美バージョンのコレは個人的に大当たり。
このアルバムを買って正解だと思わせる見事な1曲でした。一押しです。
11.炉心融解
今ではすっかり鏡音リンの代名詞、「炉心融解」
原曲よりもキーはかなり低め。とは言えあの高音部を考えれば無理もないか。
個人的にはココロ程ではないけどやや違うなーという印象が。
この曲に関しては正直どうしたかったのかが見えない。
結果としてすごく中途半端になっちゃってる気がしてならない。
鏡音リンのそれに近づけたければ無理してでももう少しキーを原曲に近づけるべきかと。
いや、相当頑張ってるのはとてもよく分かるんだけどね。
原曲とは異なる彼女の路線でいくならもっと中性的な声にした方が良かったのでは?
「頑張ろうよ」や「soundless voice」のような歌い方が合っていたような気がする。
とまぁ、否定的なことを書いたけど、ココロと同じで別に下手なわけではない。
むしろ歌だけなら上手いと思う。ただ、上手いだけ。それだけ。という印象なんです。
ココロ程ではないけれど、コレもボーカロイドが歌ってこその曲だとは思いますね。
12.ジェミニ
鏡音リンレン初期の名曲の1つ「ジェミニ」
オリジナルはラップの部分がどうも好きになれなくて敬遠してたんだけど、
こちらはその部分も含めてなかなかに良い出来。
全体的に優しさに包まれた雰囲気を演出した歌い方だと思います。
曲のテンポ自体は変わってないはずなのに、
オリジナルよりもゆったりしたように感じられるから不思議。
13.Prism
このアルバムのための書き下ろし曲「Prism」
名曲揃いのこのアルバムだけど、1番はコレだと思う。
ボーカロイド曲目当てで買ったはずなのになぜそう感じてしまったのか。
正直自分でも信じられないくらい。ビックリです。
恐らくは、他の曲はどれも元々はボーカロイドが基準だったのに対し、
この曲だけは最初から「鏡音リン」ではなく「下田麻美」が歌う曲として作られたからかな。
この曲があって初めてこのアルバムは完成できたんだろうなぁと思う。
そして、この曲があるからこそ他の曲も活きたしこの曲も存在感があると言えるはず。
そう思うのも、恐らくこの"Prism"という曲は単体だったら別に普通だろうと思うから。
シングルCDでこの曲を出していたとしても、恐らくスルーしていただろう。
でも、この曲が収録されている他の曲はみんなボーカロイドの曲。
今でこそ多少は知名度も上がってきたが、まだまだそれらが普通とは呼べないだろう。
言ってしまえばまだ「異端な」、あるいは「非一般的な」曲になっちゃうだろう。
そんな異端な曲ばかり集まった中に、1つだけある「普通な」曲。
それがこのPrismなんだと思う。
で、「普通」の中に1つ「普通じゃない」ものがあればそれを異端と扱うように、逆もまた然り。
「異端」なものの中に1つだけ「普通」なものがあれば、それもまた「異端」なのだ。
だからこそ、このPrismという曲はあれだけの存在感を放てたのではないかなと。
とは言えそれで存在感を示せるのは確かな楽曲のクオリティがあってこそ。
下田麻美さんの本気と、シグナルPの本気が生み出した結果生まれたのは言うまでもない。
だから、やっぱりこの曲があって初めてこのアルバムがあるんだと思う。
小難しいことを語っちゃったけど、つまりは「GJ」ってことですw
●収録曲に関して●
収録曲の選定についてはかなり良かったと言えるでしょう。
ネタ曲を入れず、全てガチ曲ばかりで揃えてきたのも評価できますね。
そのおかげで1つ1つの曲はすごく個性的だけども、
全体としてはまとまった絶妙なバランスのアルバムに仕上がったと思う。
欲を言えばもう少し、違う作者さんの曲も聴きたかったとは思いますが。
また、ニコニコの再生数だけ見て安易に「悪ノ召使」を入れなかったのも良かった。
アレはサビ以外は正直聴きやすいと言えるレベルじゃなかったと思うので、
歌ってもらったら更に化ける可能性はあったと思うけどね。
でも召使を単品で入れるなんて愚行かと。入れるなら「悪ノ娘」も入れないと。
できれば「リグレットメッセージ」まで欲しいところ。そうなると枠的に厳しかったのは明白。
結果論かも知れないけど「ぜんまい仕掛けの子守唄」という選曲は当たりだったと思う。
ただ、曲の感想にも書いたけど「ココロ」と「炉心融解」は人間が歌うには向かないと痛感。
分かっていたことだし覚悟はしてたけど、やっぱり多少違和感があったと正直思う。
とは言えどちらも鏡音リンを代表する楽曲なだけに、外せない事情も分かるけどね。
●まとめ●
気合を入れてたら本当に物凄い字数になってしまった。
それだけ色々なことを感じさせてくれたアルバムだったのは間違いないでしょう。
ネット上に掲載されているインタビュー記事などまで読み漁っちゃったくらいだし。
かなり期待していただけに多少の不満はあったものの、
全体的には期待していた以上に良かった1枚でした。
僕等は向かう 限界の果て まだ遠いけれど
星は輝くことやめずに 道を照らすよ
零れた涙 願いに溶けて 明日を変えていく
暗闇切り裂いて輝く 太陽の光になれ
Prism / 下田麻美
●オマケ 歌ってみて欲しかった曲たち●
1:よつばのクローバー(トラボルタ氏)
トラボルタ氏の作品なら、ココロよりこっちの方が聴きたかった。
ココロに関しては上記の懸念は最初からあったのでね。
あとは「少年銀河」なんかもあったら嬉しかったかも。
2:Transmit(シグナルP)
はさすがに無理か(汗)
最後の部分の超高音なんかはどう考えても人間には・・・ww
3:RING×RING×RING(Oster project)
リンリンシグナルとはまた違った方向でのキャラソン的位置づけとしてはアリだったかと。
4:さくら(ぶりるP)
それほど有名な曲ではないですがお気に入り。
初めてリンで「これはいい!」と思えた曲だったので。
5:右肩の蝶(のりP)
発表が最近だったので時期的に無理なのは分かるけども。
個人的にはリン版の方を希望。
6:Fire◎Flower(absorb)
力強い感じのレンオリジナル曲があまり無いので。
7:ロードローラー音頭(乱数P)
いや、ネタ曲はなしなのは分かるんだが・・・
イタズラムスメを聴いて、インタビュー記事を読んでたらふとコレが思い浮かんできて。
ぜひ思いっきりこぶしをきかせて歌ってほしい(笑)
うん、キリがなくなってきたしいい加減この辺でやめよう。
コメント
今回も読み応えのあるボリューム、素晴らしい記事でした。