ということで今日はCDレビュー。
発売からは1ヶ月ほど経っちゃいましたね。
前々から書こう書こうとは思っていたのですが・・・

このCDはPSPで発売された初音ミクのリズムゲーム(音ゲー)
"Project DIVA"のために書き下ろされた楽曲のアルバムです。
なお、Project DIVA自体はPSPを持ってないのでやってません。
なので純粋に音楽としてのみの感想です。

●収録曲●
1. The secret garden
2. Dear cocoa girls
3. 天鵞絨アラベスク
4. ラブリスト更新中?
5. 荒野と森と魔法の歌
6. いのちの歌
7. 雨のちSweet*Drops
8. マージナル
9. Far Away (GAME edit)
10. Star Story (GAME edit)
11. 荒野と森と魔法の歌(リン・レン ver.)
12. いのちの歌(リン・レン ver.)
13. The secret garden(instrumental)


本CDの初音ミクwiki内ページはコチラ
http://www5.atwiki.jp/hmiku/pages/5777.html



全体としてはよくまとまってるなーという印象。
そこまで突き抜けた良曲はないものの、ハズレもないです。
また、それぞれの曲に独自の味がありながらも、
調和を乱すような感じはなく聴き心地はすごくよかったです。
では今回も全曲、ひとことずつコメントを。
開始4曲はプロの音楽家による作詞作曲です。
マニピュレートっていうのはいわゆるミクの調声のことですね。


○全曲簡易感想○

1.The secret garden
詞:畑亜貴 曲:神前暁 マニピュレート:Otomania

ゲームとしてのProject DIVAのテーマソング的位置づけらしい。
曲自体や全体的な声の感じには不満はないんだけど・・・
出だしの「ひ・み・つ」があからさまに狙いすぎな気がして好きじゃないんだよなぁ。
無理な高音域を使っておらず、全体を通して自然な感じ仕上がっているのは好感触。


2.Dear cocoa girls
詞:畑亜貴 曲:神前暁 マニピュレート:デッドボールP

曲は可愛らしい夏をイメージさせる感じ。
曲もいいけど、詩のセンスのよさをとても感じさせる。
良くも悪くも普通に人が歌って、何かのアニメの主題歌になってもおかしくような曲。
なのだが、この曲のマニピュレートをデPにしたのは間違いなく正解。
デPのアレな曲とは当然違うけど、デPのミク声はこの曲とすごくマッチしているように思う。
マニピュレートまでプロに任せず、一般ボカロ曲製作者?に頼んだことによる成功例として、
これ以上ないほど良い事例だと思います。


3.天鵞絨アラベスク
詞曲:畑亜貴 編曲:並木晃一 マニピュレート:ヤスオ

一転して落ち着いた1曲。タイトルから想像していたイメージとは180度逆な曲調でした。
このレビューを書くにあたって「アラベスク」の意味を調べてみました。
フランス語で「アラビア風/模様」といった意味がある他、
バレエの基本的な姿勢に「アラベスク」というものがあるらしい。
言われてみると確かにアラビアな感じ?とかバレエで使うような曲っぽい気もするね。
夏っぽかった2曲目とはこれまた正反対で「雪」など冬を想像させる言葉が多いですね。
ところで「天鵞絨」ってなんて読むの?


4.ラブリスト更新中?
詞曲:畑亜貴 編曲:並木晃一 マニピュレート:Otomania

これもタイトルの印象とは逆だった曲。やっぱり2曲目のような感じを想像してました。
また、この曲は出だしと1番サビで雰囲気が一気に変わる。
同じパートなのに1番と2番でもまた雰囲気が違うなど、
とにかく特徴的な曲作りをしているように思えます。
サビに入る時の転調の心地よさがまた独特でハマります。
ここまでのプロ製作の4曲では1番のお気に入り♪


5.荒野と森と魔法の歌
製作:トラボルタ

ここからは一般?製作者のターン。1発目はトラボルタ氏
まさにトラボルタといった奥深い歌詞の曲。
この曲の歌詞からは、方向性は違えど「ココロ」と同じように
歌詞の裏にあるとてつもなく広い世界があるように思わせてくれます。
曲調はどちらかというと元気で前向きな感じ。
このアルバムの中でも特にお気に入りの1曲です。


6.いのちの歌
製作:トラボルタ

「よつばのクローバー」を彷彿とさせるようなバラード曲。
曲調、歌詞などあらゆる面で、荒野と森と魔法の歌と対比されているような気がします。
荒野と~はリズムの変化がハッキリしているのに対し、
いのちの歌は極端な変化がなくゆったりと流れる感じ。
歌詞を見ても前者は自然創りだす側、それに対し後者は守り続けることを語る歌。
などなど、「2つで1つ」と感じさせるつくりでした。


7.雨のちSweet*Drops
製作:Oster project / ニコニコ:【http://www.nicovideo.jp/watch/sm7507842

良い意味で今までのOsterらしくない作品だと思いました。
一言で言うなら「ポップな曲」でしょうか。
ノリの良い曲だけど激しさみたいなものはない。
歌わせ方もあえて今までのOster曲のような流れる感じではなくて、
1語1語を細かく切って歌わせることにより、
「軽やかさ」や雨上がりの「爽やかさ」を演出していたのかなと思う。


8.マージナル
製作:Oster project / ニコニコ:【http://www.nicovideo.jp/watch/sm5556800

かなり早い段階から"Project DIVA用"と発表されていた1曲。
雨のち~とはうって変わって、非常にOsterらしい曲だと思います。
曲のノリみたなものは似た感じなのですが、歌わせ方は素人耳に分かるほど全然違う。
色と感情を関連付けた歌詞の世界を象徴する「マージナル」というタイトル。
サビに入る「めぐる街」の「街」が「マージナル」と聴こえなくもない言葉遊び。
この曲の作詞センスの良さは本当にすごい。
歌詞、曲ともにOster氏の楽曲の中でも1番好きかも知れない。レベル高いです。


9.Far Away
製作:kz

一般流通CDの先駆者であるkz氏の曲。
既存曲で例えるならサビは「ファインダー」、Aメロは「light song」に近い印象。
しばらくkzさんの曲は聴いてなかったけど、改めてすごい人だと思わせてくれました。
特に出だしの部分が秀逸ですね。一気に気持ちをkzさんの創る世界に引き込んでくれます。
そして曲の世界が簡単に想像できる難しい言葉のない歌詞。
変に難しい言葉や横文字を使わなくても、心地の良い曲は作れることを証明してくれます。
しかし、そんな一気に引き込む強さを持つが故、曲が短いのが気になりました。
正直これはGame Editではなく他の曲と同じようにフルコーラスにしてほしかった。


10.Star Story
製作:kz

こちらはFar Awayとは逆な曲調のバラード。
詞も曲もすごくシンプルなつくりになってると思う。
それ故無駄がなく、すんなりと聴き入ることができますね。
既存曲なら「Last night, good night」に近いかな。
サビはあの曲ほど非現実的な高音域ではないですが。
そのシンプルさも手伝ってか、こちらは短さはあまり気になりませんでした。
「シンプルイズベスト」という言葉はこの曲のためにあると言っていいと思う。

11.荒野と森と魔法の歌(リン・レン ver.)
12.いのちの歌(リン・レン ver.)


5曲目と6曲目のリンレンver.です。
こっちを聴くと改めて良く分かる。トラボルタ氏はやはり鏡音使いなのだと。
ミク版も決して悪い出来ではないのだけど、それ以上にリンレンver.の出来が素晴らしすぎる。
出だしのリンの声を聞くと、本来ミクに歌わせることを想定して作っただろう曲なのに、
これがビックリするくらい合う。リンレンのオリジナル曲と言われても全く違和感がないほど。

また、トラボルタ氏は1つの楽曲に複数のボーカロイドを使うことはあまりないのだが、
このCDには珍しくリンレンのデュエットとして収録されていて、その掛け合い方がまた絶妙。
別に特に奇をてらったパート分けはしていないけど、
微妙な重ね方や2つの声を重ねるサビの力強さなど、
よく聴かないと分からない細かい部分が本当に上手いと思う。

13.The secret garden(instrumental)

1番前面に出していた曲であるが故か、この曲のみインスト版も収録。
ボーカルなしで聴くと曲単体としての良さも改めて分かります。
ミクのボーカルがないと思ってた以上に演奏は単調でした。
もっと色んな音があると思っていたんだけど、意外と音の種類も少なかったですね。
また、バックコーラスにもミクが使われていて、それは歌入りでもわかってはいたんだけど、
インストで聴くと予想以上に色んな部分にコーラスが入ってたんだなぁと感じました。
ただ、個人的な好みを言わせてもらえばインストはバックコーラスもなしにして、
完全に演奏のみになってた方が良かったかなぁ。


●選曲に関して●
ゲームのCDだし当然なのですが、他のボカロCDとは一線を画した選曲となっています。
例えばOster projectなら、
他のボカロCDに入ってる曲は大抵「恋スルVOC@LOID」か「ミラクルペイント」でしょう。
それ以外の曲だとせいぜいStardomに「Trick and Treat」が入っていたくらい。
なんでよりにもよってあんなゴミアルバムに・・・

いわゆる人気曲詰め合わせ的なコンピレーションCDでは、
マージナルや雨のちsweet dropsなど見向きもされないでしょう。
そういう人気曲重視の選曲を否定するつもりは別にないけど、
このCDのような「あるテーマに則ったコンピレーションCD」があるのも良いですよね。

また、プロの作詞・作曲家にミク用の曲を作らせるという試みも斬新でした。
恐らく"Project DIVA"という媒体があってことできたことだと思います。
まぁニコニコ動画内のボカロユーザーには、
シグナルPをはじめプロの音楽かもたくさんいるのでしょうがw

楽曲の出来については賛否両論あるようですが、個人的には概ね良かったと思います。


○まとめ○
各楽曲のクオリティには文句なし。どれも素晴らしい出来でした。
また、曲順も問題なしですね。製作者ごとにまとめた構成でしたが、
各作者の曲間に溝を感じることもなく、すんなりと次の曲へと聴き進めることができました。
そういう意味でもまとまりのある、非常良いアルバムだと思います。

ただ、ボカロCDとしては高めの3000円という値段の割に収録時間は約44分。
しかもその44分のうちの2曲は同一曲の別ボカロverで、収録曲のインストに1枠使用。
いわば「ボーナストラック」ともいえる3つで約10分も使っていることに。
そうなると実質的には10曲、時間にすれば30分少々しかない。
他のボーカロイドCDよりもかなり割高感があるのは正直否めない。
だからせめて、kzさんの2曲もフルコーラスにして欲しかったという思いは強く残る。
あるいは、ピアプロ採用楽曲からいくつか収録しても良かったのでは?
「夕暮れノスタルジック」などはこのCDの雰囲気とも合っていたと思うんだけどなぁ。

この点だけはどうしても感じてしまったことなのであえて正直に書きました。
ですが、繰り返しにはなるが収録されている曲のクオリティは素晴らしいです。
他のボカロアルバムとは間違いなく一線を画したオリジナリティあるアルバムなので、
Project DIVAをやっていない人にも十分オススメできる1枚だとは思います。

○オリコン推移○
デイリー:初登場6位→13→19→25→22→24
週間16位


めぐる街
息が苦しくてこぼれる涙に色が滲み出す
もう一度塗りなおす前に
怖くて 胸が痛くて 僕は逃げ出した

マージナル / Oster project



●オマケ ゲームとしての"Project DIVA"に関して●
Project DIVA公式サイトはコチラ→【http://miku.sega.jp/

最初にも書いたように自分はPSPを持ってないのでゲームはプレイしていません。
その上でこのゲームに関して思うところをちょっとだけ書かせてください。

実はこの"Project DIVA"発売にあたって1つ危惧していたことがありました。
それは紆余曲折を経てこれまでに築き上げてきた
「初音ミク=音楽ソフト」という認識を、
発売後間もない頃のような「初音ミク=単なるゲームのキャラクター」
逆戻りさせてしまうのではないかということです。
今では一応「初音ミク」がどういうものであるか、ある程度は認知されてきたと思います。
しかし、Project DIVAがあまりに話題になりすぎてしまっては、
いわゆる「一般人」層の認識が「やっぱりゲームのキャラクターじゃん」
に変わってしまいかねないと常々思っていました。

本当はこれだけで1つ記事を書こうと発売直後に思っていたのですが、
こんなに時期が過ぎてしまったし、とりあえずは杞憂で済みそうなのでやめときます。
結論を言ってしまうと、ミク廃の間では話題にはなったけど
それが一般層にまでは浸透しなかったので大丈夫でした、って感じかな。
ネット上の反応(amazonのレビュー、ニコニコ動画等)を見る限りでは、
DIVAからミクに入った人はそう多くなさそうなので・・・

ただ、公式サイトを見ると、やっぱりミクのキャラゲーとして売り出す気満々なつくりだね。
音ゲーとしてよりも、キャラゲーとしての側面に重きを置いた紹介の仕方をしていると思う。
部屋のカスタマイズとかミクの着せ替え、写真撮影機能などなど・・・

ハッキリ言ってどうでもいいわ!

それよりも、もっと1つ1つの楽曲や音ゲーとしての側面に、
あるいはピアプロ等で多数のユーザーが携わって作られたことなどを重視した作り方、
あるいは売り出し方をしてほしかったなと思う。そういう意味ではちょっと残念でした。
場合によってはPSP本体の購入まで考えていたけど、
そこまでしようと思わせてくれるものではなかった、というのが正直なところです。
とは言えメモリースティックに入れたMP3データを使っての譜面作成ができる
「エディットモード」の搭載には賞賛を送るけどね。

ゲームとしてのProject DIVAに対して思ったのはこんなところ。
あと、サイト内の収録楽曲紹介コーナーで試聴できるようになってるんだけど、
唯一、「みくみくにしてあげる♪【してやんよ】」のみ試聴不可なんですよね。
これがいわゆる音楽業界のラスボスことJASRA○様の弊害なんですね。

お目汚し、失礼しました。

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