少女ノイズ (光文社文庫)
2010年7月4日 読書
割と好きな作家の出す本格的ミステリということで、
その昔かなり注目していた本作。
初版発売当時買うかどうか迷ったものの、
ハードカバー故の高値もあって見送っていました。
が、今年になって文庫版が出たので読んでみました。
期待半分不安半分でしたが意外と楽しめましたね。
三雲氏の作品は電撃文庫の作品しか読んだことがなく、
氏の非ライトノベル作品を読むのは今回が初めてでした。
自分の読み方がかなりライトノベルに偏っているのはあるだろうけど、
内容的には良くも悪くも「思いっきりライトノベルだな~」と感じました。
著者の昔の作品である「レベリオン」や「i.d.」と同じ世界の話であるから
余計にそう感じてしまうのかも知れません。
確かに文体は著者の他の作品と比べると硬めに思えたし、挿絵もない。
そもそも光文社文庫はいわゆる「ライトノベルレーベル」では当然ない。
しかし、ミステリであると同時にキャラクター小説としての側面が非常に強く、
それがラノベっぽく思わせてしまうのでしょうか。
と、オビにも記されているこの解説は、
自分もミステリ読みの適性がないせいか、割と共感できました。
解説をきちんと読めば有川氏がミステリ部分を批判しているのではなく、
キャラクタ小説としての完成度の高さを讃えるための表現であることは分かるはず。
そういった側面を特に強く感じたのは最終章「静かな密室」
これまで探偵役の瞑のお供として第三者的位置にいたスカに対し殺人の容疑がかけられる。
それを颯爽と表れた瞑が一瞬でトリックと真犯人を解明し、容疑者だったスカを開放する。
そして最後の最後にデレる
前4章の話に比べて謎解き部分がものすごくあっ気ない。
それは、そうすることによって瞑の尋常じゃない頭の良さを
最後にもう1度印象付けることを狙っていたように思えました。
まさに「何か知らんがすぱーんと謎が解けてかっこよかった、以上おしまい!(解説より)」
状態です。別にミステリ部分を軽視するわけじゃないが、第5章は特にそう感じられました。
こういうキャラクターの創り方はある意味非常にライトノベルらしい気がしました。
ただ、各話の事件の当事者となる人物たちの印象は正直言って薄かった。
これは瞑とスカの物語である以上仕方ないんだけど、
事件の当事者の印象が薄いと事件への印象もあまり残らなくなってしまう。
なのでもう少し事件そのものの印象を強くする何かが欲しかったところ。
ただ、それすらも瞑の天才的な頭脳を印象づけるための布石で、
あえて事件の印象が薄くなるように描いていた気さえしてしまうから不思議。
いっぽうミステリとして見るとどうなのか。
1冊に5つの話が収録されている連作短編でありページ数が限られるため、
本格的かと問われればやや物足りなく感じる人もいそうなのは否めない。
が、普段ミステリをほとんど読まない自分にとっては程よくサプライズな展開もあり、
ミステリとして読んでもそれなりに面白かったように思えます。
一部「そのトリックはねーわ」と思うこともあるにはあったけど、
存外身近なものがトリックの材料になるのはよくあることではないかと。
というわけで(ミステリ適正のない自分の場合)ミステリとしてもそれなりに楽しめ、
そして何より瞑とスカの分かりやすいラブラブな出会いの物語を楽しむ作品でした。
自分は世界の繋がる過去2作を既に読んでいたのでこう言っても説得力ないけど、
この作品単体でも十分に楽しめる作品になっていると思います。
少なくとも話の内容に関連性はないので大丈夫。
「少女ノイズ」を読んで自分が真っ先に感じたこと。
それは瞑とスカの関係が「レベリオン」の香澄と恭介に重なって見えたことでした。
尋常じゃなく頭の良い女子とごくごく平凡な男子、という構図が連想させたのですかねぇ。
瞑が香澄と何らかの関係があるのは本文中から推測できるし、
明言はしていないものの作者も暗にほぼ認めてるわけで。
やはり天才の血筋は天才が生まれるということなのでしょうか?
あとは皆瀬准教授は今でも目からレーザー出せるのかとか(笑)
少女ノイズの舞台はレベリオンの時代から15年前後は進んでいるはずだけど、
梨夏の持つ雰囲気は相変わらず変わっていませんでしたね。
でも少女ノイズしか読んでない人が皆瀬准教授を見て、
昔は目からレーザーを放つトンデモ少女だったとは想像できないだろうなぁw
「レベリオン」「i.d」そして「少女ノイズ」
この3作すべてに登場している唯一の人物である彼女は見事な名脇役だと思います。
きっと作者も愛着のあるキャラなんだろうなぁ。
少女ノイズを読み終わり、まずそんなことを考えたわけです。
んで、翌日にはレベリオンを読み返したのは言うまでもありません。
改めて読んでみるともっと色々気になることが出てきてね。
香澄はR2ウィルスを死滅させ、レベリオンの治療法を確立することに成功したのかとか、
40ページで瞑が口ずさんでいたのは恭介の「楽園に紅き天使の歌を」なのかとか。
他にもいくつかあったんだけど本当に些細なことなので以下略。
それにしてもレベリオンが完結したのは2002年、もう8年も前なんだね。
初めて読んだ当時はまだ高校生だったんだから、そりゃぁ歳を取ったものだ。
ライトノベルというものにはまり込んだ最初期の作品だっただけに、
きっと自分の中の思い入れが強い作品だったんだろうなぁ。
かれこれ読み返すのも3回目だし、改めて読んでも自然にストーリーが思い出せたくらい。
建前として書いた感想もまったくのウソではないけれど、
それ以上に「少女ノイズ」は「レベリオン」を読み返したくなる1冊でした。
スカと瞑の未来を想像すると同時に、垣間見えた梨夏や香澄のレベリオン完結後の姿、
あるいはその他のレベリオンやi.d.のキャラたちや双葉塾の未来の姿。
そういったものを想像する楽しさも見出してくれた作品でした。
(だからこそ余計にキャラクター小説に見えたのかも知れませんね)
その昔かなり注目していた本作。
初版発売当時買うかどうか迷ったものの、
ハードカバー故の高値もあって見送っていました。
が、今年になって文庫版が出たので読んでみました。
期待半分不安半分でしたが意外と楽しめましたね。
三雲氏の作品は電撃文庫の作品しか読んだことがなく、
氏の非ライトノベル作品を読むのは今回が初めてでした。
自分の読み方がかなりライトノベルに偏っているのはあるだろうけど、
内容的には良くも悪くも「思いっきりライトノベルだな~」と感じました。
著者の昔の作品である「レベリオン」や「i.d.」と同じ世界の話であるから
余計にそう感じてしまうのかも知れません。
確かに文体は著者の他の作品と比べると硬めに思えたし、挿絵もない。
そもそも光文社文庫はいわゆる「ライトノベルレーベル」では当然ない。
しかし、ミステリであると同時にキャラクター小説としての側面が非常に強く、
それがラノベっぽく思わせてしまうのでしょうか。
ミステリ部分、ぶっちゃけどうでもいい。
「少女ノイズ」は彼と彼女が出会い、求め合う、
ただそれだけの恋の物語だ。
と、オビにも記されているこの解説は、
自分もミステリ読みの適性がないせいか、割と共感できました。
解説をきちんと読めば有川氏がミステリ部分を批判しているのではなく、
キャラクタ小説としての完成度の高さを讃えるための表現であることは分かるはず。
そういった側面を特に強く感じたのは最終章「静かな密室」
これまで探偵役の瞑のお供として第三者的位置にいたスカに対し殺人の容疑がかけられる。
それを颯爽と表れた瞑が一瞬でトリックと真犯人を解明し、容疑者だったスカを開放する。
前4章の話に比べて謎解き部分がものすごくあっ気ない。
それは、そうすることによって瞑の尋常じゃない頭の良さを
最後にもう1度印象付けることを狙っていたように思えました。
まさに「何か知らんがすぱーんと謎が解けてかっこよかった、以上おしまい!(解説より)」
状態です。別にミステリ部分を軽視するわけじゃないが、第5章は特にそう感じられました。
こういうキャラクターの創り方はある意味非常にライトノベルらしい気がしました。
ただ、各話の事件の当事者となる人物たちの印象は正直言って薄かった。
これは瞑とスカの物語である以上仕方ないんだけど、
事件の当事者の印象が薄いと事件への印象もあまり残らなくなってしまう。
なのでもう少し事件そのものの印象を強くする何かが欲しかったところ。
ただ、それすらも瞑の天才的な頭脳を印象づけるための布石で、
あえて事件の印象が薄くなるように描いていた気さえしてしまうから不思議。
いっぽうミステリとして見るとどうなのか。
1冊に5つの話が収録されている連作短編でありページ数が限られるため、
本格的かと問われればやや物足りなく感じる人もいそうなのは否めない。
が、普段ミステリをほとんど読まない自分にとっては程よくサプライズな展開もあり、
ミステリとして読んでもそれなりに面白かったように思えます。
一部「そのトリックはねーわ」と思うこともあるにはあったけど、
存外身近なものがトリックの材料になるのはよくあることではないかと。
というわけで(ミステリ適正のない自分の場合)ミステリとしてもそれなりに楽しめ、
そして何より瞑とスカの分かりやすい
自分は世界の繋がる過去2作を既に読んでいたのでこう言っても説得力ないけど、
この作品単体でも十分に楽しめる作品になっていると思います。
少なくとも話の内容に関連性はないので大丈夫。
以上建前レビュー終了。以下コアなファンにしか分からないだろう本音レビュー
「少女ノイズ」を読んで自分が真っ先に感じたこと。
それは瞑とスカの関係が「レベリオン」の香澄と恭介に重なって見えたことでした。
尋常じゃなく頭の良い女子とごくごく平凡な男子、という構図が連想させたのですかねぇ。
瞑が香澄と何らかの関係があるのは本文中から推測できるし、
明言はしていないものの作者も暗にほぼ認めてるわけで。
やはり天才の血筋は天才が生まれるということなのでしょうか?
あとは皆瀬准教授は今でも目からレーザー出せるのかとか(笑)
少女ノイズの舞台はレベリオンの時代から15年前後は進んでいるはずだけど、
梨夏の持つ雰囲気は相変わらず変わっていませんでしたね。
でも少女ノイズしか読んでない人が皆瀬准教授を見て、
昔は目からレーザーを放つトンデモ少女だったとは想像できないだろうなぁw
「レベリオン」「i.d」そして「少女ノイズ」
この3作すべてに登場している唯一の人物である彼女は見事な名脇役だと思います。
きっと作者も愛着のあるキャラなんだろうなぁ。
少女ノイズを読み終わり、まずそんなことを考えたわけです。
んで、翌日にはレベリオンを読み返したのは言うまでもありません。
改めて読んでみるともっと色々気になることが出てきてね。
香澄はR2ウィルスを死滅させ、レベリオンの治療法を確立することに成功したのかとか、
40ページで瞑が口ずさんでいたのは恭介の「楽園に紅き天使の歌を」なのかとか。
他にもいくつかあったんだけど本当に些細なことなので以下略。
それにしてもレベリオンが完結したのは2002年、もう8年も前なんだね。
初めて読んだ当時はまだ高校生だったんだから、そりゃぁ歳を取ったものだ。
ライトノベルというものにはまり込んだ最初期の作品だっただけに、
きっと自分の中の思い入れが強い作品だったんだろうなぁ。
かれこれ読み返すのも3回目だし、改めて読んでも自然にストーリーが思い出せたくらい。
建前として書いた感想もまったくのウソではないけれど、
それ以上に「少女ノイズ」は「レベリオン」を読み返したくなる1冊でした。
スカと瞑の未来を想像すると同時に、垣間見えた梨夏や香澄のレベリオン完結後の姿、
あるいはその他のレベリオンやi.d.のキャラたちや双葉塾の未来の姿。
そういったものを想像する楽しさも見出してくれた作品でした。
(だからこそ余計にキャラクター小説に見えたのかも知れませんね)
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