“文学少女”見習いの、卒業。
2010年8月31日 読書
今月発売の文学少女の最新刊。見習いシリーズ完結編となる「卒業。」
本そのものは27日にフラゲしていたものの、
なかなか読む時間を確保できず今日まで持ち越しに。
今朝は5時半に目が覚めてしまい、7時ごろから一気に読みました。
途中朝食を挟んだものの、午前中いっぱいかけて読了。
午後は印象的だったページや既刊を読み返したり、
本書の感想ブログを読み漁ったりとして過ごしました。
その結果いつも通り読後の余韻で丸1日潰れました。
毎回こうなっちゃうから文学少女は休日にしか読めなくて困るw
読んでるこっちも胸が苦しくなるほどとにかく切なくて、
それでいて非常に気持ちの良い読後感。今回もしっかり「文学少女」の物語でした。
今回も見習いシリーズではお馴染みとなった3部構成。
ただ、今回は今までとは順番が変わり、
メインとなる長編「寂寞。」・掌編「ある日のななせ」・そしてエピローグ的に短編「卒業。」
という順番になっていました。
ちなみに今月のFBOnline【http://www.enterbrain.co.jp/fb/pc/】では、
この文学少女見習いシリーズの特集が組まれています。
が、この特集。昨日発売したばかりの本書のネタバレも多数あり。
未読者は注意が必要ななんとも微妙な特集でしたw
「寂寞。」は菜乃の親友である冬柴さんと彼女の過去を知る先生の物語。
時期的には前巻の文化祭終了からクリスマスまで。元ネタとなったのは漱石の「こころ」
本編「巡礼者」の1年後にあたり、随所に巡礼者を思い起こす描写が見られます。
冬柴さんを助けるために放った菜乃の言葉が逆に彼女を追い詰めてしまう展開。
これは心葉の言葉が美羽を引き裂いてしまった巡礼者の展開を思わせます。
視聴覚室での心葉の「想像」の解説は巡礼者のプラネタリウムのシーンを思い出しました。
また、随所に見られる「慟哭」というキーワード。
これらのように巡礼者を思わせるものが多数出てきますね。
そして、見習いシリーズ開始時点からもっとも重要になるだろうと言われていた、
「心葉=井上ミウ」であることのカミングアウト。
これに加えて何よりも重要なポイントとなるのが「青空に似ている」
これまで菜乃が「青空に似ている」の話題を出す度に微妙な反応を示していたので、
自分の作品が知らない場所で、知らない人たちに大きな影響を与えていたことを実感し、
自分の作った物語と向き合い、乗り越える。それが心葉には必要だったのでしょう。
結果として心葉のこの経験が冬柴さんと忍成先生を救うことになったんだと思うし、
そのために心葉に与えられた試練だったようにも感じます。
まさにこのタイミングでしか有り得ない使い方と言えるのでは。
この2つの要素の使い方はとにかく素晴らしかったと思う。
もう1つ同時に印象的だったのが準レギュラーたちを徹底的に排除していたことでした。
これまでほぼ毎回少しずつでも登場していた竹田さんや芥川君、美羽らの登場は皆無。
心葉と菜乃、ななせに冬柴さん、忍成先生といった物語の中心人物だけに絞ったのでしょう。
その結果展開がだれることなく最終話にふさわしい盛り上がりや、
緊迫した展開を創ることができたのだと思いますね。
全体としてはほぼ文句ナシのお話だったんだけど、少し気になったのが2つ。
1つは前巻ラストの「分かったでしょう、邪魔よ」の衝撃と比べて、
冬柴さんと心葉のお付き合いに関してやや拍子抜けだったこと。
12ページでいきなり「しばらく冬柴さんの彼女になる」だからね。
最初から半ばわかってたとは言えこの時点で本気じゃないのが明らか。
その動機が分かるのは後半だったけれど、なんとなく読めちゃう展開でしたね。
もう1つは最後の冬柴さんの旅立ち。やや無理があるような気がしてしまいました。
細かいことを言うなら一晩で退学の手続きやら飛行機の手配やらができたのか、とかねw
と、そんな細かいことはさて置いても、
今すぐじゃなくても「いつか、絶対に会いに行ってやるんだから」
という感じで終わらせても良かったのではないかと思いました。
ただ、菜乃が「本当の淋しさ」を知るには必要な展開だったのもすごく分かる。
後述の「卒業。」で卒業式の日に菜乃と心葉が笑顔で別れるには、
心葉の卒業が最初の「本当の淋しさ」では都合が悪いようにも感じるしね。
これに関してはきっと、個人的な願望なんでしょうね。
この事件を通し友情を確かめ合った2人が今後も不器用だけど仲良く過ごしていく。
そんな未来を自分は想像したかったんだと思う。
「巡礼者」で和解できた心葉と美羽のように。
あと、願望と言えば冬柴さんの笑顔な挿絵が1枚あると嬉しかったかな。
いやまぁ、今回も例に違わず素晴らしい挿絵ばかりではあるんだけども。
「ある日のななせ」はななせが立ち直る過程の1コマを描いた掌編。
あるいは自分のようなななせスキーがニヤニヤするための掌編とも言う
「初恋。」が美羽、「傷心。」で千愛ときたらやはり最後はななせなのでしょう。
本編エピローグの再会への繋がりを、見習いシリーズと挿話集2で描いてきました。
最後の最後にようやくななせも救われたように思います。
そんなきっかけとなったのは、天使とやはり菜乃の存在。
「あたし以外の人と浮気したらダメ」というセリフに見える図々しさはそれまでなかったもの。
こういう部分に気持ちの変化が見えるのが憎いよなぁ。
そして、バレンタインの数日前から卒業式での別れまでを描いた「卒業。」
正真正銘見習いシリーズ最後の物語。ネタ本はチェーホフの「桜の園」
紆余曲折はあるけれども、なんといっても見せ場は卒業式当日。
遠子先輩の絵との対面から、最後の告白まで。その流れ、やり取り。
最後の最後までページを進める速度を緩めさせてはくれませんでした。
最初に通して読んだ時はそれほどではなかったんだけど、
後から何回も読み返していくとそのうちにこみ上げてくるものがありましたね。
彼女の初恋はこれ以上にないほど贅沢な片思いだったでしょう。
大好きな人と2人きりの部室で毎日を過ごし、想い出を育むことができる。
何度でも好きだと伝えることができ、別れの日にはあんな素敵なプレゼントをもらえる。
きっとリアルであんなものをもらえたら、それはもう一生の宝となるでしょう。
でも現実の初恋は、片思いは、まずこうはならない。
だからこそ余計に切ない思いに駆られるんだろうね。
こんな幸福な片思いを手に入れることが出来たのは、
どれだけ拒絶されても強く強く想い続けていたからこそ。
そんな彼女の根気強さは、思いっきり体育会系ですよね。
そんな遠子先輩とは正反対な体育会系文学少女、日坂菜乃。
最初はただのウザキャラだった彼女にここまで感情移入することになるとは、
当初は思いもしていませんでした。
この外伝シリーズは井上心葉や琴吹ななせの成長を見る物語でもありました。
しかし、やはり主役は彼女、日坂菜乃なのでしょう。
何も知らない純真無垢な少女が痛みを知り、心の闇を知り、淋しさを知り、そして恋を知る。
そうして成長していく彼女の物語であったように思えてなりません。
もう1人の文学少女の物語。最後まで楽しく読ませていただきました。ごちそうさまでした。
と、カッコ良く?締めておいてこんなこと言うのも野暮なんだけどさ。
今更ながらに思っちゃったから最後に1個だけ書いておく。
この学校教師も生徒も波乱万丈な人生送ってる人多すぎだろ・・・・・
次は年末の挿話集4、そして来年のもう1冊で終わりですね。
まだ少しだけこの物語を読むことが出来るのは嬉しい限りですが、
完全な別れへのカウントが1つずつ減っていると思うと複雑ですね。。。
まず無理な願いなのは分かってるけど、出来れば菜乃1人になった文芸部の話とかも
短編でいいのでちょっと読んでみたいなぁ。
本そのものは27日にフラゲしていたものの、
なかなか読む時間を確保できず今日まで持ち越しに。
今朝は5時半に目が覚めてしまい、7時ごろから一気に読みました。
途中朝食を挟んだものの、午前中いっぱいかけて読了。
午後は印象的だったページや既刊を読み返したり、
本書の感想ブログを読み漁ったりとして過ごしました。
その結果いつも通り読後の余韻で丸1日潰れました。
毎回こうなっちゃうから文学少女は休日にしか読めなくて困るw
読んでるこっちも胸が苦しくなるほどとにかく切なくて、
それでいて非常に気持ちの良い読後感。今回もしっかり「文学少女」の物語でした。
今回も見習いシリーズではお馴染みとなった3部構成。
ただ、今回は今までとは順番が変わり、
メインとなる長編「寂寞。」・掌編「ある日のななせ」・そしてエピローグ的に短編「卒業。」
という順番になっていました。
ちなみに今月のFBOnline【http://www.enterbrain.co.jp/fb/pc/】では、
この文学少女見習いシリーズの特集が組まれています。
が、この特集。昨日発売したばかりの本書のネタバレも多数あり。
未読者は注意が必要ななんとも微妙な特集でしたw
以下ネタバレ自重してません。ご注意を
「寂寞。」は菜乃の親友である冬柴さんと彼女の過去を知る先生の物語。
時期的には前巻の文化祭終了からクリスマスまで。元ネタとなったのは漱石の「こころ」
本編「巡礼者」の1年後にあたり、随所に巡礼者を思い起こす描写が見られます。
冬柴さんを助けるために放った菜乃の言葉が逆に彼女を追い詰めてしまう展開。
これは心葉の言葉が美羽を引き裂いてしまった巡礼者の展開を思わせます。
視聴覚室での心葉の「想像」の解説は巡礼者のプラネタリウムのシーンを思い出しました。
また、随所に見られる「慟哭」というキーワード。
これらのように巡礼者を思わせるものが多数出てきますね。
そして、見習いシリーズ開始時点からもっとも重要になるだろうと言われていた、
「心葉=井上ミウ」であることのカミングアウト。
これに加えて何よりも重要なポイントとなるのが「青空に似ている」
これまで菜乃が「青空に似ている」の話題を出す度に微妙な反応を示していたので、
自分の作品が知らない場所で、知らない人たちに大きな影響を与えていたことを実感し、
自分の作った物語と向き合い、乗り越える。それが心葉には必要だったのでしょう。
結果として心葉のこの経験が冬柴さんと忍成先生を救うことになったんだと思うし、
そのために心葉に与えられた試練だったようにも感じます。
まさにこのタイミングでしか有り得ない使い方と言えるのでは。
この2つの要素の使い方はとにかく素晴らしかったと思う。
もう1つ同時に印象的だったのが準レギュラーたちを徹底的に排除していたことでした。
これまでほぼ毎回少しずつでも登場していた竹田さんや芥川君、美羽らの登場は皆無。
心葉と菜乃、ななせに冬柴さん、忍成先生といった物語の中心人物だけに絞ったのでしょう。
その結果展開がだれることなく最終話にふさわしい盛り上がりや、
緊迫した展開を創ることができたのだと思いますね。
全体としてはほぼ文句ナシのお話だったんだけど、少し気になったのが2つ。
1つは前巻ラストの「分かったでしょう、邪魔よ」の衝撃と比べて、
冬柴さんと心葉のお付き合いに関してやや拍子抜けだったこと。
12ページでいきなり「しばらく冬柴さんの彼女になる」だからね。
最初から半ばわかってたとは言えこの時点で本気じゃないのが明らか。
その動機が分かるのは後半だったけれど、なんとなく読めちゃう展開でしたね。
もう1つは最後の冬柴さんの旅立ち。やや無理があるような気がしてしまいました。
細かいことを言うなら一晩で退学の手続きやら飛行機の手配やらができたのか、とかねw
と、そんな細かいことはさて置いても、
今すぐじゃなくても「いつか、絶対に会いに行ってやるんだから」
という感じで終わらせても良かったのではないかと思いました。
ただ、菜乃が「本当の淋しさ」を知るには必要な展開だったのもすごく分かる。
後述の「卒業。」で卒業式の日に菜乃と心葉が笑顔で別れるには、
心葉の卒業が最初の「本当の淋しさ」では都合が悪いようにも感じるしね。
これに関してはきっと、個人的な願望なんでしょうね。
この事件を通し友情を確かめ合った2人が今後も不器用だけど仲良く過ごしていく。
そんな未来を自分は想像したかったんだと思う。
「巡礼者」で和解できた心葉と美羽のように。
あと、願望と言えば冬柴さんの笑顔な挿絵が1枚あると嬉しかったかな。
いやまぁ、今回も例に違わず素晴らしい挿絵ばかりではあるんだけども。
「ある日のななせ」はななせが立ち直る過程の1コマを描いた掌編。
「初恋。」が美羽、「傷心。」で千愛ときたらやはり最後はななせなのでしょう。
本編エピローグの再会への繋がりを、見習いシリーズと挿話集2で描いてきました。
最後の最後にようやくななせも救われたように思います。
そんなきっかけとなったのは、天使とやはり菜乃の存在。
「あたし以外の人と浮気したらダメ」というセリフに見える図々しさはそれまでなかったもの。
こういう部分に気持ちの変化が見えるのが憎いよなぁ。
そして、バレンタインの数日前から卒業式での別れまでを描いた「卒業。」
正真正銘見習いシリーズ最後の物語。ネタ本はチェーホフの「桜の園」
紆余曲折はあるけれども、なんといっても見せ場は卒業式当日。
遠子先輩の絵との対面から、最後の告白まで。その流れ、やり取り。
最後の最後までページを進める速度を緩めさせてはくれませんでした。
最初に通して読んだ時はそれほどではなかったんだけど、
後から何回も読み返していくとそのうちにこみ上げてくるものがありましたね。
彼女の初恋はこれ以上にないほど贅沢な片思いだったでしょう。
大好きな人と2人きりの部室で毎日を過ごし、想い出を育むことができる。
何度でも好きだと伝えることができ、別れの日にはあんな素敵なプレゼントをもらえる。
きっとリアルであんなものをもらえたら、それはもう一生の宝となるでしょう。
でも現実の初恋は、片思いは、まずこうはならない。
だからこそ余計に切ない思いに駆られるんだろうね。
こんな幸福な片思いを手に入れることが出来たのは、
どれだけ拒絶されても強く強く想い続けていたからこそ。
そんな彼女の根気強さは、思いっきり体育会系ですよね。
そんな遠子先輩とは正反対な体育会系文学少女、日坂菜乃。
最初はただのウザキャラだった彼女にここまで感情移入することになるとは、
当初は思いもしていませんでした。
この外伝シリーズは井上心葉や琴吹ななせの成長を見る物語でもありました。
しかし、やはり主役は彼女、日坂菜乃なのでしょう。
何も知らない純真無垢な少女が痛みを知り、心の闇を知り、淋しさを知り、そして恋を知る。
そうして成長していく彼女の物語であったように思えてなりません。
もう1人の文学少女の物語。最後まで楽しく読ませていただきました。ごちそうさまでした。
と、カッコ良く?締めておいてこんなこと言うのも野暮なんだけどさ。
今更ながらに思っちゃったから最後に1個だけ書いておく。
この学校教師も生徒も波乱万丈な人生送ってる人多すぎだろ・・・・・
次は年末の挿話集4、そして来年のもう1冊で終わりですね。
まだ少しだけこの物語を読むことが出来るのは嬉しい限りですが、
完全な別れへのカウントが1つずつ減っていると思うと複雑ですね。。。
まず無理な願いなのは分かってるけど、出来れば菜乃1人になった文芸部の話とかも
短編でいいのでちょっと読んでみたいなぁ。
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