フリーゲーム寸評「一週間戦争」
2011年11月4日 ゲーム
少し前になるのですが、「一週間戦争」というフリーゲームをやってみました。
以前に紹介した「全く普通のRPG」と同じ"Cat End Turn"の作品です。
プレイ時間は約20時間ほど。ツクール作品の中ではかなり遊べる方だと思います。
舞台はゼイルン大陸にある2つの国「アベリア」と「ローム」
この二国の間で起こった戦争に参加する男女4人の物語です。
アベリア国の志願兵として戦争に参加することになった「レギル」
そんな彼の幼馴染でアベリア国の若き軍師である「エルミィ」
対するローム国に属する暗殺者である「ミア」
そしてそんな両国に強い恨みを持ち、無差別な虐殺を繰り返す謎の男「グゼイド」
そんな4人の主人公それぞれの視点で7日間の戦争を経験していきます。
主人公ごとに独自のシステムが用意されており、
1人分が短編RPG1本分程度のボリュームがありけっこう長く遊べます。
4人それぞれの視点が時に他の主人公と交わり、ある時は裏側を描く。
1つの出来事を複数の視点で見ていくことによる見え方の違いを上手く用いています。
なお、プレイする順番は決められておらず、プレイヤーが自由に選ぶことができます。
なのでどんな順番で進めるか、特に最初に誰を選ぶかによって、
話の見え方が全然違ってくるのではないかと思われます。
まっさらな状態では1回しかプレイできないのが当たり前だけど残念ですね。
ちなみに筆者は エルミィ→グゼイド→レギル→ミア の順にプレイしました。
全部終わってからいざ考えると、なかなかに邪道な順番だったと思いますね(苦笑)
○ストーリー○
間違いなく本作の1番のウリとなる部分でしょう。
安直でご都合主義なハッピーエンドにはせず、
「戦争」の無益さをリアルな創作として描ききった部分は好印象。
よく完成されている素晴らしいストーリーになっていたと思います。
分岐や選択肢がほとんどなく一本道なこの作品でこれだけのものに仕上げたのは、
ただただお見事としか言えないですね。
ただ、あえて難を言うのであればローム側の描写はやや弱かったのが気になります。
主人公のうち2人がアベリア側で、唯一ローム側に属するミアも裏で暗躍する場面が多く、
ローム側の表側の部分があまり見えてこなかったのは残念ですね。
(とは言えここはストーリーの根幹上なかなか見せられない部分なのも分かるんだけど)
とは言え1つの物語を4つの視点で見ていくことで自然と深みが出てくるし、
4人の視点を通して徐々に真相が明らかになっていく様子はとても楽しめました。
時に交じり合い、時には裏側を描くこの見せ方は見事なものだったと思います。
この「1つの出来事を複数の視点で描く」手法は割とよく使われそうなものだけど、
フリーゲームでここまで完成させたものはなかなか無いと思います。
恐らく創る側としてはものすごく大変な作業になるからなのでしょう。
また、会話や戦闘時に多数挿入されるイラストも独自の雰囲気があってよかったです。
お世辞にも「上手」とは言えないイラストですが、
その雑さが逆に良い方向にこの戦争のイメージを象徴し、
重苦しい雰囲気を演出してくれています。
最終日のスーパーインフレはまぁご愛嬌ですかねw
●システム面●
4人の主人公それぞれに独自のシステムが用意されていて、
1人分だけでも軽い短編RPGを遊ぶような感覚になれるのは良かったですね。
それが4人分ともなれば相当なボリュームでした。
ただ、気になったのは「使い捨てのシステム」がかなり多い点。
4人それぞれに独自のシステムを用いているので仕方ない部分でもありますが、
1回限りしか使わないシステムが多数あり、
それらが上手く繋がっていない印象はありました。
特にそれを強く感じたのがエルミィ編でした。
軍隊を指揮して勝利に導くシステムは簡単ながらもよく出来ていたものの、
そのシステムで戦うのは序盤だけで、中盤以降は全く無関係になっていたのが勿体無い。
後半は毎回独自のシステムで1回限りの使い捨てシステムの繰り返しで進み、
序盤に鍛えた軍隊を活かす機会がまったく無いのは残念でした。
しかもその使い捨てシステムに懇切丁寧にチュートリアルが用意されていて、
正直ちょっと鬱陶しかったのは事実。
シチュエーションが追いついてない印象は否めませんでした。
他の主人公にも所々にそういう部分があり、
それが基本となる4人の主人公の戦闘システムの浅さになってしまっているかと。
システム面は良くも悪くも「広く浅く」作られている感じがして、
長時間遊べるこの作品にはそれが噛み合ってなかったように感じました。
使い捨てにシステムはある程度切り捨ててでも、
メインとなる戦闘システムをもう少し作り込んで欲しかった気がします。
●難易度●
全体を通してみるとやや高めかなという印象です。
ただ、主人公ごとに難易度の差が大きかったのは気になりました。
レギル編はオーソドックスで程よい難易度だったけど、
エルミィ編は上記のようにやや温め。
グゼイド編は全体を通してやや難しめで歯ごたえのある難易度なものの、
ボス戦はコツさえ掴んでしまえばただの作業に成り下がってしまうのが残念。
で、1番問題なのがミア編でこれが色んな意味で難しすぎた。
戦闘パートはかなりハードなものの「攻略する」楽しみは見出せたし、
1番難しい場面では負けても進むようになっていたのでまだ良かった。
だが潜入パートてめーはダメだ。
あれだけは正直なところやっていて苦痛でしかありませんでした。
画面外の兵士の視界に入ってしまうだけで即ゲームオーバーなのはさすがにやりすぎかと。
兵士の視界(=即死ポイント)が見れるようになるアイテム「ホークアイ」も、
説明では途中で手に入れるように書かれていたのに、
実際は開始してすぐの場所に毎回置いてある始末。
だったらそんな余計なシステムは排除して最初から視界は見える、
でも何の問題もなかったんじゃないかと。
他の部分はともかく、このミア編潜入パートだけはダメだったと言わざるを得ないです。
○その他○
まず音楽。OPの重苦しい雰囲気が本編と最高に合っていて良かったです。
あとはクリア後の作者のあとがきでも語られているように、
グゼイド編のテーマBGMがメチャクチャ似合っててカッコよかったのが印象的です。
他の3人の主人公にも同じようにテーマBGMを設けてやれば良かったのに。
コレ!っていうものが見つからなかったのかも知れないけどね。
あとはフリー作品の宿命だけどもちらほら見受けられる誤字。
数は少ないと思うけどけっこう致命的な部分にちらほら。
それと各キャラクターの視点で未知の人物は「???」表記で統一しているので、
本来「???」でないといけない部分に人物名が入ってしまっているのもちらほら。
まぁこれらは読み手がきちんと補完してあげれば問題ないので些細なことだけどね。
<まとめ>
全体を通して「戦争の悲惨さ」と「4人の視点で描く」という2つの軸がブレずに、
結末まで描ききっていたのがとても良かったです。
「軸」がブレないというのは面白いゲームの大事な条件の1つだと思うし、
本作はそれを見事なまでに体言してくれている作品です。
各項目の感想ではネガティブなこともけっこう書いちゃっているけど、
それは「悪い点」ではなくあくまで「ちょっと惜しい点」なので、
こうだからつまらなかったと書きたいわけではないのであしからず。
なんか重箱の隅を突きまくってるような・・・そんな感じですね。
いやホント、面白かったのは間違いないんですよマジで。
ギャグ要素皆無の重苦しいシリアス一辺倒な物語なので遊ぶ人を選ぶとは思うけど、
そういうのが大丈夫な人にはとても良い作品だと思います。
以前に紹介した「全く普通のRPG」と同じ"Cat End Turn"の作品です。
プレイ時間は約20時間ほど。ツクール作品の中ではかなり遊べる方だと思います。
舞台はゼイルン大陸にある2つの国「アベリア」と「ローム」
この二国の間で起こった戦争に参加する男女4人の物語です。
アベリア国の志願兵として戦争に参加することになった「レギル」
そんな彼の幼馴染でアベリア国の若き軍師である「エルミィ」
対するローム国に属する暗殺者である「ミア」
そしてそんな両国に強い恨みを持ち、無差別な虐殺を繰り返す謎の男「グゼイド」
そんな4人の主人公それぞれの視点で7日間の戦争を経験していきます。
主人公ごとに独自のシステムが用意されており、
1人分が短編RPG1本分程度のボリュームがありけっこう長く遊べます。
4人それぞれの視点が時に他の主人公と交わり、ある時は裏側を描く。
1つの出来事を複数の視点で見ていくことによる見え方の違いを上手く用いています。
なお、プレイする順番は決められておらず、プレイヤーが自由に選ぶことができます。
なのでどんな順番で進めるか、特に最初に誰を選ぶかによって、
話の見え方が全然違ってくるのではないかと思われます。
まっさらな状態では1回しかプレイできないのが当たり前だけど残念ですね。
ちなみに筆者は エルミィ→グゼイド→レギル→ミア の順にプレイしました。
全部終わってからいざ考えると、なかなかに邪道な順番だったと思いますね(苦笑)
○ストーリー○
間違いなく本作の1番のウリとなる部分でしょう。
安直でご都合主義なハッピーエンドにはせず、
「戦争」の無益さをリアルな創作として描ききった部分は好印象。
よく完成されている素晴らしいストーリーになっていたと思います。
分岐や選択肢がほとんどなく一本道なこの作品でこれだけのものに仕上げたのは、
ただただお見事としか言えないですね。
ただ、あえて難を言うのであればローム側の描写はやや弱かったのが気になります。
主人公のうち2人がアベリア側で、唯一ローム側に属するミアも裏で暗躍する場面が多く、
ローム側の表側の部分があまり見えてこなかったのは残念ですね。
(とは言えここはストーリーの根幹上なかなか見せられない部分なのも分かるんだけど)
とは言え1つの物語を4つの視点で見ていくことで自然と深みが出てくるし、
4人の視点を通して徐々に真相が明らかになっていく様子はとても楽しめました。
時に交じり合い、時には裏側を描くこの見せ方は見事なものだったと思います。
この「1つの出来事を複数の視点で描く」手法は割とよく使われそうなものだけど、
フリーゲームでここまで完成させたものはなかなか無いと思います。
恐らく創る側としてはものすごく大変な作業になるからなのでしょう。
また、会話や戦闘時に多数挿入されるイラストも独自の雰囲気があってよかったです。
お世辞にも「上手」とは言えないイラストですが、
その雑さが逆に良い方向にこの戦争のイメージを象徴し、
重苦しい雰囲気を演出してくれています。
最終日のスーパーインフレはまぁご愛嬌ですかねw
●システム面●
4人の主人公それぞれに独自のシステムが用意されていて、
1人分だけでも軽い短編RPGを遊ぶような感覚になれるのは良かったですね。
それが4人分ともなれば相当なボリュームでした。
ただ、気になったのは「使い捨てのシステム」がかなり多い点。
4人それぞれに独自のシステムを用いているので仕方ない部分でもありますが、
1回限りしか使わないシステムが多数あり、
それらが上手く繋がっていない印象はありました。
特にそれを強く感じたのがエルミィ編でした。
軍隊を指揮して勝利に導くシステムは簡単ながらもよく出来ていたものの、
そのシステムで戦うのは序盤だけで、中盤以降は全く無関係になっていたのが勿体無い。
後半は毎回独自のシステムで1回限りの使い捨てシステムの繰り返しで進み、
序盤に鍛えた軍隊を活かす機会がまったく無いのは残念でした。
しかもその使い捨てシステムに懇切丁寧にチュートリアルが用意されていて、
正直ちょっと鬱陶しかったのは事実。
シチュエーションが追いついてない印象は否めませんでした。
他の主人公にも所々にそういう部分があり、
それが基本となる4人の主人公の戦闘システムの浅さになってしまっているかと。
システム面は良くも悪くも「広く浅く」作られている感じがして、
長時間遊べるこの作品にはそれが噛み合ってなかったように感じました。
使い捨てにシステムはある程度切り捨ててでも、
メインとなる戦闘システムをもう少し作り込んで欲しかった気がします。
●難易度●
全体を通してみるとやや高めかなという印象です。
ただ、主人公ごとに難易度の差が大きかったのは気になりました。
レギル編はオーソドックスで程よい難易度だったけど、
エルミィ編は上記のようにやや温め。
グゼイド編は全体を通してやや難しめで歯ごたえのある難易度なものの、
ボス戦はコツさえ掴んでしまえばただの作業に成り下がってしまうのが残念。
で、1番問題なのがミア編でこれが色んな意味で難しすぎた。
戦闘パートはかなりハードなものの「攻略する」楽しみは見出せたし、
1番難しい場面では負けても進むようになっていたのでまだ良かった。
だが潜入パートてめーはダメだ。
あれだけは正直なところやっていて苦痛でしかありませんでした。
画面外の兵士の視界に入ってしまうだけで即ゲームオーバーなのはさすがにやりすぎかと。
兵士の視界(=即死ポイント)が見れるようになるアイテム「ホークアイ」も、
説明では途中で手に入れるように書かれていたのに、
実際は開始してすぐの場所に毎回置いてある始末。
だったらそんな余計なシステムは排除して最初から視界は見える、
でも何の問題もなかったんじゃないかと。
他の部分はともかく、このミア編潜入パートだけはダメだったと言わざるを得ないです。
○その他○
まず音楽。OPの重苦しい雰囲気が本編と最高に合っていて良かったです。
あとはクリア後の作者のあとがきでも語られているように、
グゼイド編のテーマBGMがメチャクチャ似合っててカッコよかったのが印象的です。
他の3人の主人公にも同じようにテーマBGMを設けてやれば良かったのに。
コレ!っていうものが見つからなかったのかも知れないけどね。
あとはフリー作品の宿命だけどもちらほら見受けられる誤字。
数は少ないと思うけどけっこう致命的な部分にちらほら。
それと各キャラクターの視点で未知の人物は「???」表記で統一しているので、
本来「???」でないといけない部分に人物名が入ってしまっているのもちらほら。
まぁこれらは読み手がきちんと補完してあげれば問題ないので些細なことだけどね。
<まとめ>
全体を通して「戦争の悲惨さ」と「4人の視点で描く」という2つの軸がブレずに、
結末まで描ききっていたのがとても良かったです。
「軸」がブレないというのは面白いゲームの大事な条件の1つだと思うし、
本作はそれを見事なまでに体言してくれている作品です。
各項目の感想ではネガティブなこともけっこう書いちゃっているけど、
それは「悪い点」ではなくあくまで「ちょっと惜しい点」なので、
こうだからつまらなかったと書きたいわけではないのであしからず。
なんか重箱の隅を突きまくってるような・・・そんな感じですね。
いやホント、面白かったのは間違いないんですよマジで。
ギャグ要素皆無の重苦しいシリアス一辺倒な物語なので遊ぶ人を選ぶとは思うけど、
そういうのが大丈夫な人にはとても良い作品だと思います。
製作サイト「Cat End Turn」
【http://catendturn.web.fc2.com/index.html】
(参考)「全く普通のRPG」筆者の感想
【http://34643.diarynote.jp/201011011154312494/】
【2013年7月26日:タイトル画像追加】
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