楽聖少女

2012年6月18日 読書
先月の半ばくらいだったでしょうか。
事前情報なしにたまたま本屋で見かけて、
その場で購入即決でした。

「神様のメモ帳」や「さよならピアノソナタ」などで有名?な
杉井光の新シリーズ。その名も「楽聖少女」
ピアノソナタ大好きな自分としては買わない理由がありませんでした。
杉井光の音楽を題材にした新作となれば外すわけないですからね。

最近は事前にネットで新刊チェックすることも多く、
こういう風に思わぬ新作に出会えた時の嬉しさは、
久しく味わえていませんでした。


-概要-
21世紀の日本に住む図書室が大好きなごく普通の高校生ユキ。
ある日突然現れた悪魔メフィストフェレスの手によって、
彼はかの文豪ゲーテとして19世紀のドイツへと連れられてしまう。
しかしそのドイツは世界史で知っている19世紀のドイツとはどこか違っていた。
そして紆余曲折を経てユキ(ゲーテ)は偉大なる音楽家、ベートーヴェンと出会う。
ただそのベートーヴェンもまた、彼や大半の読者が知っているだろう歴史とは異なり・・・
ボクっ娘の美少女だったりするのでありますw
そんなこんなで様々なことに葛藤しつつもゲーテとして生活していく数ヶ月。
果たして彼がゲーテとして19世紀のヨーロッパに呼び出された理由とは・・・



読んでみて最初に思ったのは、当時の音楽やら文学やらを、
なんとなく分かった気にさせるのが相変わらず上手いなぁということ。
ほとんどそれらについての知識がない状態で読み始めても、
しっかりその世界を味わえるのがたまらない。
それがこの人の作品の最大の魅力ではないでしょうか。

確かに題材は19世紀のヨーロッパなので、
それらの文学や音楽などの知識があれば一層面白いのでしょうが、
特別な知識がなくても何の問題もなく作品の世界に入り込める。
そしてそういった分野についてちょっと詳しくなったような気になれる。
これは以前「さよならピアノソナタ」を読んだ時にも強く感じたことですが、
今作もそんな物語の醍醐味をしっかり味わわせてくれます。

タイムスリップやパラレルワールドを題材にした作品は世に数多くあると思いますが、
そんな中でも現代と当時とのギャップを上手く組み合わせている作品だと思いますね。
こんなことを実際に経験したことは当然ながらないけども、
もし同じ体験をした場合に「なるほど確かにそう思うだろうなぁ」
と思わせる描写が本当に多く、それもまた入り込みやすい要素の1つなのでしょう。

また「芸術」の持つ情熱やある種の狂気といったものが、
素人にも感じられるように描かれているのも◎
自分は芸術家ではないので実体験はないけども、
なんとなく分かる気がしちゃうんですよねぇ。

タイトルやイラストの印象ではもっとお堅い作品かと思っていましたが、
決してそんなことはなくいかにも電撃文庫らしい作品でしたねw
題材が題材だけに格式ばった部分もあるにはありましたが、
それが面白さを阻害してはおらず、雰囲気のある作品に仕上がっています。
というわけで今作もたいへん楽しめた1冊でした。

惜しむらくは、読み始める前にamazonのレビューを開いてしまい、
できれば知らずに読みたかったネタバレを受けてしまったことでしょうか。
まぁほんの50ページくらい読めば分かることではあったし、
ネタバレ自重!と声を大にして叫ぶほどのことでもなかったんだけどね。
だからレビュワーに文句を言うのもお門違いなのも分かるんですよ。
憎むべきは、読む前にレビューを開いてしまった自分の愚かさですね・・・

そんなわけで自分がネタバレ受けずに読みたかったため、
今回はネタバレほぼなしで軽めに書いてみました。
何にせよたいへん楽しませていただいた1冊でした。 


○ここちょっとだけネタバレ○


1つだけ不満があったとすれば、
クライマックス部分のバトルは無理やり感があって、
浮いているように感じてしまったところ。
なんかそこだけよくあるラノベ感がしてしまったのが残念だったかな。
ただまぁ、結末で明らかになる「名前の意味」は納得だったし、
そこを考えればあんな形になるのかなぁとも思うんだけどね。


あとは随所に見られる「さよならピアノソナタ」を知っていればこその、
ニヤニヤ出来る描写はファンとしては嬉しい限り。
それ故上記のネタバレは知らないままで読みたかったところです。
読んだ人には言うまでもなく分かるだろうけど、ユキの家族云々のくだりですな。
 

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