楽聖少女2

2012年11月4日 読書
読んだのは一月ほど前になるの「楽聖少女」第2巻。
1巻を読んだ時から間違いなく当たりと感じていましたが、
2巻でもその面白さは健在、更に加速していますね。
相変わらず芸術を分かった気にさせるのが上手い本作です。

1巻ではユキを通して描かれるタイムスリップ的な部分や、
ゲーテという文豪に触れることで見える文学的側面。
あるいは主にルゥを通して描かれるベートーヴェンやその他の音楽。

こういった側面を中心に1巻では描かれていましたが、
本巻ではこの世界の在り方について掘り下げていった印象です。
それはナポレオンの苦悩から見えてくるこの世界の正史との食い違いだったり、
メフィの契約や、カールの復讐心を通して描かれる悪魔の所業だったり。

魔術や悪魔が飛び回る19世紀のヨーロッパというこの世界のあり方が少しずつ明かされ、
作品自体のファンタジーさがいい具合に演出されてきている。
1巻ではやや違和感のあった異能バトル展開も、
慣れもあるのでしょうが上手く作品に溶け込んでいたように感じました。
主題の1つであるナポレオン戦争に魔術や悪魔を絡めて掘り下げており、
ファンタジーとしても「それらしく」なってきました。
おそらくこの辺はゲーテの作品を知れば知るほど納得のいく形なのでしょう。

それでいて根幹にあるのはゲーテの戯曲とルゥ(=ベートーヴェン)の音楽。
音楽や芸術だけ話が進むのではなく、かと言って異世界ファンタジーで終わるでもない。
どちらもこの作品には無くてはならない大事な要素であり、
相互に、あるいはもっと複雑に折り重なってたいへん面白いお話に仕上がっています。

ボクっ娘美少女なベートーヴェンとキャッキャウフフな安っぽい物語ではなく、
かと言ってそういった要素を完全には排除せず程良いアクセントにしている。
そういった部分も含め色々な要素が本当にバランスよく整えられていると感じました。

アクセントと言えばユキの独白から垣間見える、<「ナオや真冬の現在の姿」
=『さよならピアノソナタの後日談」の更に後日談』
>としての側面も非常に嬉しい。

扱う題材が題材なだけに重厚な雰囲気がありつつも、
ユキのツッコミを主とした笑えるやり取りなどで作品を堅苦しくしていないのが◎
カールさんのちょっと方向のズレたツンデレ具合はもちろん、
個人的にはハイドン師匠のマッスルっぷりが物凄くツボw


1巻の結末ではユキが「ゲーテとして生きていく」決意を固め、
本巻のエピローグでは、「ゲーテの作品に向き合う」決意を固める。
そんな風にゲーテとして転生してきたユキの心境の変化が見られて良かったです。


本当に色々な要素が上手く折り重なっており、
読んでいて心地よい、本の世界に没頭できる作品です。
本作で描かれる音楽や文学がどのような意味合いを持つのか、
それをきちんとは理解できていないのがなんとも勿体無い。
知らなきゃ知らないで何の問題もなく楽しめるのですが、
多少なりとも知っていたらきっとまた違った味わいがあるとも思うのでね。
そう思うとゲーテのファウストくらいは読んでみようかなぁ、と思えた1冊でした。


なーんか思うところが断片的すぎて我ながら酷い文章ですがこんなところです。

コメント

お気に入り日記の更新

日記内を検索